おサルに願いを⑪日吉大社の神猿さん
こんにちは。二助企画です。
「おサルに願いを」シリーズ第11弾です。
前回は、土偶や埴輪や民芸品を取り上げて、いにしえの人々が安全なお産を願う際に、おサルさんの存在に力をもらっていたことをお伝えしました。
今回は、魔除けの象徴として扱われる日吉大社の神猿(まさる)さんについてのお話です。
まずは、日吉大社について。
比叡山のふもとである滋賀県大津市坂本に、鎮座する日吉大社。全国約3,800社の日吉・日枝・山王神社の総本宮で、古来より「日吉といえば猿」と言われているほど、おサルさんと縁の深い神社です。
日吉大社の神猿(まさる)さんは、「魔が去る」「勝る」に通じると親しまれる、とても縁起のよい「神のお使い」です。
日吉大社では、境内いたるところで神猿さんの存在を感じることができます。
まずは、ここ「神猿舎」(まさるしゃ)
(画像:二助企画)
なんと、日吉大社では、2匹のおサルさんが飼われています。
日吉大社の歴史は大変古いのですが、室町時代の記録の中でもその存在が確認できているそう。江戸時代の書物『日吉山王権現知新記』の記録によると、神猿さんの食費の予算がちゃんと計上されていたとか。
ちなみに、現在飼われている2匹にはお名前は付けられていません。参拝者の方々がそれぞれに好きなように呼んで良いそうです。日吉大社の方のお話によると、恐らく全国でもおサルさんを飼っている神社は、ここだけではないかとのことでした。
そして、この日吉大社には、野生のおサルさんが訪れるスポットもあります。
それが、大己貴神(おおなむちのかみ)が祀られる西本宮楼門横にあるこちらの木
(画像:二助企画)
マメガキという渋柿なのですが、比叡山からお猿さんが降りてきて、柿の実を食べていくそうです。
神猿さんもここの柿を好んで食べることから、親しみを込めて「猿柿」と呼ばれています。
この猿柿が寄り添っている西本宮楼門には、屋根の四隅におサルさんがいます。これらのおサルさんは、「棟持猿」と呼ばれ、方位除けや厄魔退散の役割を果たしているのだとか。
(画像:二助企画)
更に西本宮楼門には、「蟇股(かえるまた)」と呼ばれる2階部分の正面にも、3匹のおサルさんが装飾されています。
(画像:日吉大社ウェブサイトよりお借りしました/左、二助企画/右)
日吉大社は、平安の都・京都御所の表鬼門(北東)の方角に位置します。従って、都の魔除・災難除を祈る社として、崇敬を受けてきました。
ところで、京都御所の鬼門にあたる猿が辻には、御幣を担いだ猿の彫像があります。まるで日吉大社の西本宮楼門の「棟持猿」のようですね。
(画像:宮内庁京都事務所ウェブサイトよりお借りしました)
日吉大社には、西本宮と東本宮がありそれぞれに楼門があります。
上記でお伝えしたように、西本宮楼門ではたくさんおサルさんの姿をみることができます。しかし、東本宮楼門には、棟持猿もおらず、蟇股にもおサルさんがいません。
それはなぜなのか?
次回のコラムでは、二助企画なりにその謎に迫ってみたいと思います。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
参考文献
・世界動物神話/篠田知和基 八坂書房
・サル その歴史・文化・生態/デズモンド・モリス 伊達淳訳 白水社
・アニマルロアの提唱‐ヒトとサルの民俗学/廣瀬鎮 未来社
・週刊神社紀行特装版 日吉大社 湖国に鎮まる山王さん
・山王総本山 日吉大社
・宮内庁京都事務所>京都御所>猿が辻
https://kyoto-gosho.kunaicho.go.jp/gate/2C81
その他