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おサルさんの花粉症

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こんにちは。二助企画です。

 

目がかゆーい!くしゃみ・鼻水が止まらない……

花粉症の人にとって、辛い季節ですね。今回は、ちょっとマニアックな、おサルさんと花粉症のお話。

 

日本では、1963年にブタクサ花粉症が、1964年にスギ花粉症がはじめて報告されています。ちなみに、この1964年の報告の舞台は、おサルさんで有名な日光地方です。

 

そして、そこから20年余り。1986年には、広島の宮島野猿公苑のニホンザルの中に、花粉症と思われるメスザルが「偶然」に発見され、翌年の87年には、学会誌でニホンザルの花粉症についての論文が発表されています。

 

さて、ここからが本題。

 

おサルさんの花粉症に関しては、その症状は、目の痒み、くしゃみ、鼻水……とほぼヒトと同じであるように見えます。最近では、ニュースでも、花粉症のおサルさんの映像が流れたりしていますね。でも、厳密には、その症状や体内の反応は、ヒトの花粉症とは少し様相が違うようです。

 

まずは症状。

 

「ニホンザルのスギ花粉症の場合は,結膜,眼瞼の症状と,水性鼻汁,くしゃみなどの鼻症状が観察され,眼症状のほうが鼻症状よりも顕著であった。実際に,発症中のニホンザルの鼻腔を観察したところ,鼻閉を思わせるような下鼻甲介の腫脹は見られなかった。」(以上、「ニホンザル宮島群にみられたスギ花粉症について」/横田明ほか)とのこと。

 

簡単に表現すると、おサルさんの花粉症の症状は、鼻に関する症状よりも目に関する症状の方が目立つということですね。

 

そして、体内の反応について。

 

花粉症とはアレルギー反応の一種で、体内に入ってきた花粉を異物と捉え過剰に反応している状態のことです。その異物の受け皿のようなものをスギ花粉に関しては、スギ特異的IgE抗体と呼びます。このスギ特異的IgE抗体に関して、こんな記述を見つけました。

 

「ヒトでは過去10年間でスギ特異的IgE抗体保有率は,8%から35%4倍強に増大していた。一方サルでは,この間のスギ特異的IgE抗体陽性率の増加は全く認められず,10年前も現在も同レベルの8-12%の抗体保有率であった。」(以上、「ニホンザルの抗体産生能を指標にした花粉症の急増に及ぼす環境影響の評価」より)

 

この研究は、1994年に完了しているもので少し古いものではありますが、つまりヒトは年々花粉症反応が出やすくなってきているのに、おサルさんはそうではない!と言うことですね。

 

一体、何がそうさせているのか?

 

その答の一つに、どうやら「寄生虫感染」が関係しているとのこと!!!

 

ヒトの寄生虫感染は、数十年の間に70%から約20%に激減。一方、ニホンザルでは過去30年間寄生虫感染率は全く変わらず8090%の高感染状態を維持。研究の結果、寄生虫感染の低下が花粉症の増大に直接関わることが明らかになっているそうなんです。

 

このように、ヒトとおサルさんの花粉症の「違い」に着目することで、ヒトのアレルギー症状を緩和するためのヒントを見出すことができるということですね。

 

私たち人間は服薬で症状を緩和することができますが、おサルさん達はそういう訳にはいきません。今回は、つらい症状に耐えてくれているおサルさん達のおかげでアレルギーの研究が進んでいる現実を知り、改めておサルさん達に感謝の気持ちを抱くこととなりました。

 

二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。

猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。

ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

また次回のブログでお会いしましょう!

 

 

主な参考文献・サイト(順不同)

・厚生労働省>リウマチアレルギー対策>花粉症に対する適切な医療の確保>医療従事者等向けQ&A

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/ryumachi/index.html

・耳鼻咽喉科・アレルギー科 清水おかべクリニック>なぜ「現代病」と呼ばれるのか?

https://www.3330.jp/Pollinosis3.htm

・ニホンザル宮島群にみられたスギ花粉症について/霊長類研究 1978

・ニホンザルにおけるスギ花粉症の自然発症に関する研究/後藤 俊二ほか 京都大学, 霊長類研究所

・ニホンザルのスギ花粉症に関する研究/後藤 俊二ほか 京都大学, 霊長類研究所

ニホンザルの抗体産生能を指標にした花粉症の急増に及ぼす環境影響の評価/後藤 俊二ほか 京都大学, 霊長類研究所

・新しい霊長類学/京都大学霊長類研究所 出版社:講談社

 

ほか

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